残り香
部屋のものすべてに彼氏の匂いがうつった。
部屋に彼氏がいない時、ただひたすら時間が過ぎて欲しいと思うばかりなので、寝ている。さっき、夜8時にもう、耐えられなくなって、このまま朝まで寝よう とおもってねむったら、いま起きてしまった。4時間の昼寝をしただけだった。むしろ朝まで遠のいた…
つらい
だって僕ら MOON CHILDだから
へやのモヨウがえをした。いままでよりも住みづらく、ダサくなった。モヨウがえのセンスがマジでない。
洗濯をした。洗濯をするのは意外と、嫌いじゃない。好きでもない。彼氏のゲボのついた服をぴかぴかに洗った。もうひどく酔っぱらいませんようにと念を込めた。きっと叶わない夢…。頼むから、健康のために、お酒を飲みすぎないでほしい。急性アルコール中毒をおこして死んじゃうかもしれないような飲み方をするから。この前、先輩が合宿でテキーラを一気したら泡を吹いて死にかけていたらしいので、いやその先輩が死のうが関係ないけれどやっぱり彼氏にはそうなって欲しくない。
8月ってすごい暑い。天気がよいので布団を干した。布団を干したら清々しい気持ちになった。でも布団叩きを持っていないので、パンパンしてない。干した意味があるのかはわかんない。だって一人暮らし初心者だから。でも、一人暮らしをしてよかったとおもった。めんどうなことも自分でしなくてはいけないから。みんなも一人暮らしをしよう。みんな、私の近所に住んでくれればいいのに…。
今日は友だちと会って、お互いの彼氏自慢を何時間もした。私の彼氏の方がいけてるとおもう。それは友だちも思ってるとおもう。ともかく、愛する人がいるってことはサイコーってこと。友だちのエッチの仕方も聞いた。変なのっておもった。でも、きっと本人はそれが楽しいんだとおもう。だって私だって 楽しく生きてるから。このままでいたいと僕は思うから。。。
上野から帰るとき、彼氏の元カノみたいなひとを電車で見かけた。元カノはサークルの先輩だから私もしっている。ショートカットで、歯がガチャガチャで、くっきり二重のタレ目をした、へらへらといつも笑っている、へんな女のひと。電車の中でそのひとは、彼氏と一緒に楽しそうに会話していた。彼氏の元カノは、不思議なひとだった。〝井上たけひこが描写しそうな障害者の女の子〟という表現が一番しっくりくる。明るくてへらへらしていて、いつも何を言ってんだかよくわからない、へんちくりんな、でも魅力的な女の子。お酒が好きだったらしい。
彼氏はそのひとのことを、すっごく好きだったんだって。いいな、とおもった。客観的に見て、理想的なカップルだとおもった。互いにヘラヘラしていてわけわかんないカップルだとおもった。わたしは、この彼氏とはつりあわないような、真面目な人間だとおもう。けれど、好きだから。好きだから一緒にいます!好きだから。 ドリー見たい。
バイバイ もうつかれたよ
誰か遊ぼうよ 暇だしさ
生きてるのガチもうしわけない
親に金払ってもらってて、いまドニートだし、なのに好きな服買ったり映画みたりデート行ったりしてすごして、勉強はしてないし授業もでなかったし 客観的に見たらホントに生きてる意味が 無い…
バイト決めたけど 応募する勇気なし
とにかく彼氏が好きすぎてずっと一緒にいたいからバイトをする暇など無い という クソワガママな言い訳 しっかりしなきゃ…
昨日2時間しか寝てないからいまねむい
ほんとは火曜に帰るつもりだったんだけど、あしたかえる。彼氏は明日用事あるので、私が1日早めて帰っても会えるわけでは無いのに。というのは、もうとにかく実家にいるのがなぜか苦痛に感じるから…。先月まではこんな気持ちはなかったのに、、、
なんというか これは親ばなれとはちがくて…ただのじぶんのわがままで…その時々の、人間の、優先順位で…いまは家族より彼氏を優先したいお年頃になってしまい。
家族は大切だけど…それでもとにかく、苦痛なので、帰ります。さっさとねる。ごめんね両親。ごめんね祖父母。愛してくれてありがとう。
はずかしいけどそれがすべてさ
深海の中を泳いでみたい。水圧で死にたくないけど
メルカリでいろいろな出品者にコメント無視されてる。しんでくれ。。。無視しないで。。。
海ってさ 広すぎて怖いよね。得体が知れなさすぎ。海、得体が知れないがち。海いきたいなー。海行きたいから、水着を実家から輸入する。いちご柄のビキニだから積極的に着ていきたい、でも背毛がはずかしくてあまり水着を着たくない…生えんなよマジ!人間そこは退化せえ!
バイトさがさねぇと
そんでもって 夏
引越し先のミシシッピには綿花畑が広がっていて、私の住む家の近所もやはり、いちめん綿花畑だった。そこを走り抜けていくと小さくてぼろい民家がある。で、そこにはおじいさんとおばあさんと、でっかい白のラブラドールレトリバーがいる。やさしい性格の、もう12歳くらいのラブラドールレトリバー…
もう 日も暮れてきたし帰ろ っておもったら。前の方を歩いていた近所の少年たちが私に気づき、帰路を逆行してわざわざ私の方へ向かってきた。まーたいじめられる。私は都会からやってきて、いつもうっかり アフタヌーンティーの話とかしちゃうから、きらわれてしまう。それは、でも、わかってる。私の着てる服からいい香りがするのも、私の履いてる革靴があぜ道を歩くのに適してないのも、ぜんぶいじめられる原因だって。でもわかってはいながら、仕方ないとも思った。意外と心が強いのだと思った。
向こうからやってきた少年たちのなかで一番でかいリーダー格のやつが私の前で立ち止まって、「やぁこんにちは」と言いながら私の、お母さんに磨いてもらったぴかぴかの革靴をふんづけた。私はなにも抵抗しなかった。そうして少年たちは笑い、まだまだ私をいじめたかったらしいが日が暮れるのを気にしたのか、リーダー格のやつが「帰るぞ」というと、全員私の方をちらちら見つつ向こうのほうへ帰って行った。少年たちの家にも、父親や母親が待っているからだ。痩せこけた、醜い田舎者の両親たちが。死ね と思った。醜い田舎者の、痩せこけた、醜い、父親たち、母親たち。肉体労働ばかりしていると、脳が縮んで気が狂う。きっとやつらの父親、母親は、気が狂っている。
と、考えながらあるいていると、その、綿花畑を抜けたところにある民家へたどり着いた。外で、おばあさんがラブラドールレトリバーに餌をくれているところに遭遇した。おばあさんはこちらをちらと見、微笑んだかとおもうと、私の方へきて、「コーヒーを飲む?」と聞いた。私はコーヒーが飲めなかったけれど、なんだか断りきれなくて、ちいさくうなづいた。バテるような暑さだった。ちょっとそこで待っててね とおばあさんが言い、私を置いて家へ入っていった。私は手持ち無沙汰になり、なんとなく、さっき踏まれた革靴の状態を確認したり、たぶんこっちがテネシー州、とあたりを見渡したりした。そんなことをしていると、やっぱりなんだか早くお家に帰りたくなって、つい、うっかり、その場を逃げ出してしまった。きっといまおばあさんは私のためにコーヒーを淹れてくれてるのに…。私は、わがままな子供のように、思慮分別のない子供のように、もうそんな年じゃないのに、突発的に民家から走り去った。ラブラドールレトリバーと少し目があったけれど、見なかったふりをした。家の方へずっと走って行った。バテるような暑さ。汗がダクダク、目に入って痛かった。家へ向かう途中、いじめっ子集団の中の1人の家をとおりすがった。窓から、いじめっ子と、その醜くて痩せこけた父親と母親が3人で仲よさげに話しているのが見えた。醜くて痩せこけた父親が何か笑いながらいじめっ子の頭をガシガシなでていて、醜くて痩せこけた母親はその2人を、洗い物をしながら眺めていた。私はつい、うっかり立ち止まった。どうしようもなくて、そいつの家の庭先に干してあったシャツや靴下に泥をかけてやった。そして、その近くに咲いていたよくわからないカラフルな花に唾を吐きかけた。すると、とたんに元気が湧いてきた。家に帰るぞ。革靴を磨いてもらうために。
ポワポワ
小学生の時、国語の授業がいちばん退屈だった。会議をするみたいなコの字のかたちに机をならべて、教科書の内容についてみんなで意見をだしあう。手を上げて発表するメンツなんかいつも同じだから、それ以外の、私とかは、ただそいつらと先生が討論してるのをぼんやり眺めているだけだった。国語って、本当につまらなかった。小学生の頃の授業って、ひとつの単元をめちゃ細かくやるじゃない。ひとつの話のひと段落だけを、45分まるまる使って話し合う。ひと段落にそんなに話すことねえよ〜。私読書とかそんな好きじゃなかったし。でも私のママは小説マニアだったんだけどね。官能小説ね。まーとにかく、国語の授業中はじっとしていられないくらい退屈で、いますぐにここにいる奴らを全員包丁で刺してやりたいとおもっていた。いまおもうと、あんな時代にはもう戻りたくないと思う。よくじっとしていられたなとおもう。国語なんか。