2015-10-13
平泳ぎとかクロールとかよりも、むしろ犬掻きのほうが早くすすめるじゃん私
電車に乗っていると日差しが私のほうへむいてきたけどあまり嫌だなと思わなかったので夏はもうおわりらしい ドアを手動のボタンで開ける電車にて
平泳ぎをすると体がどんどん沈んでいった
力を入れすぎているからだと指摘され、直してみようと力の抜き方を頭の中で考え(これがよくなかった、水泳は頭で考えてもこんがらがる一方だった)、
そうして改良を重ねるごとに私の体はどんどん沈んでいった 沈みやすい体質になっていった
すごい沈んだ すごいめっちゃ沈んだ
毎回2リットルくらい水を飲んでからプールサイドに上がる
プールサイドに上がるのがまた大変で、泳いで疲れ切っているのにさいごに自分の体にトドメを刺すかのように、高いプールサイドに上がるために腕力を使わなければならない
プールサイドって 2段みたいになっている
プールサイドにすわると、足が置けるところがあって、1段下がって足が置けるところにすわると、膝から下がプールの水の中に入る、って、そうなっているじゃん
腕力ですこしあがってから、ひざを1段目にのせて、そうしてやっとひざの力で立ち上がって2段目に上がるのだ(全身が疲れているため、問答無用で右ひざに全体重を乗せる)
私はそれで、ひと夏のうちに右ひざに大きな痣を作った 毎度毎度右ひざをつかって立ち上がるからだ
こっそりみんなのひざを見てみたが、みんなはつるつるのきれいな若いひざをしていた
中2のとき運動会種目のムカデ競争でみんなですってんころび、私はそのなかでいちばんひどい怪我を負ったのだった
先頭にいたわけじゃなく、真ん中にいたのにいちばんひどい怪我を負った ひざをずるっとすりむいて、白いなにかがむき出しになる程だった
私はその気持ち悪い傷がまだひざに残っていて、「一生消えないよ〜ん」といった感じでまだ居るその傷をうらんでもうらみきれない だって女の子なのにひざが汚いなんて…
プールサイドにあがってなんか先生の説明を聞いてるときに私は体育座りをしてうつむいて、首の後ろに全力の太陽の光を浴びながら、濡れたプールサイドの床と濡れた自分のつま先を見ていた
ちょうどじぶんのつま先のところにつぶれた黄色いてんとう虫がいたので、そいつをつま先ではじいて飛ばしてしまった そしたらてんとう虫が前の前の子の背中にぴたりとくっついてしまって、ヤバッておもった
そんなことをしていると先生のホイッスルがピーと本当に耳障りなかんじで鳴った 見ると、もう私の列の先頭の子は泳ぎ始めていた それで私は立ち上がった
私は隣にいたぜんぜん知らない子に「これいまなに泳ぎやるの?」って聞くと、その知らない子は「バタフライだって」と言った
バタフライなんかできるわけないじゃん、って一人ごちた
でも私はバタフライをする時間が好きだった
それは単純に、みんなできないからだった
クロールや平泳ぎはみんなできるけれど、バタフライはみんなできないから、私のできなさがあまり目立たなくなる
私は、口では「バタフライなんかイヤー、できないもん、めんどくさー」と言ってみせるが、内心ホッとしつつ、はやくこのまま授業が終わってしまえばいい、こうやってみんなで「できないー」って言いながらチンタラ泳いでるだけでさっさと時間が経ってしまえばいいとおもった
運良く、その日だけはそういう日になった
他の日は結局たくさん泳がされたし、毎度のことながら2リットルくらい水を飲んだ
水面にはいろいろな汚いものが浮いているのに
9月の水泳は7月の水泳のときよりもトンボがたくさん飛んでいる
交尾をしながら飛んでいるいやらしいトンボを見てみんなでニヨニヨするのだった キモーいって言いながら みんな手でよけて
あまりに憂鬱な水泳の授業なので、そのときは私はトンボになりたいと思った なにも考えずにひたすら交尾 いいご身分だなとおもった
電車の中で私はぐっすりねむって夢を見ていた
私は電車の中でぐっすりねむってしまうことがよくあり、隣の人がどんなひとであろうとよりかかってしまう
電車や車にのるとすぐに眠くなってしまう体質で(赤ちゃん?)、けれど一応は薄れゆく意識の中で「やばいぞ このままだととなりのオバさんに完全によっかかってしまう」と罪悪感を抱いてみたりもするけど、でもやっぱり超眠いので、 けっきょく理性をすっとばすことに決定してそれをムリヤリ正当化するために「となりのオバさんを自分のお母さんだと思って気兼ねなく寄りかかろーっと」と自分の脳内の最高裁判所長官が勝手に認めてしまうのだ
今日も変わらず、となりのおじさんを自分のお母さんだとおもって、よっかかって夢を見ることに決めた そして夢を見た 塩素の匂いがした