僕がいるからオーベイビ

私の祖父母家は私のすんでる家からとても近い。私がほとんど生きていないころ、2歳とか3歳のころくらいまで、その祖父母家の真隣に小さな居酒屋があった。それは、私のおばあちゃんとおばあちゃんの友人と刺青のたくさん入った叔母の3人で切り盛りしていた。当時、叔母の仕事がなく、仕方がないからということで居酒屋をやろうということになったらしい。それで、おばあちゃんがこの居酒屋を経営した。近所の人たちはこの居酒屋に通い詰めた。当時は母の恋人という関係だった私の父も足しげく通った。

 
ジュンちゃん。おばあちゃんの友人の甥。ジュンちゃんは、当時私の母や父より少し年上だった。ジュンちゃんは都会で板前をやっていて、そのご、なにがあったかは知らないけれどこちらに戻ってきて、それでなりゆきでこの居酒屋で料理人を務めることになった。素人がつくる料理よりもずっとよいので、重宝がられた。あまりものをいう人ではなかったけれど、温厚な人柄で居酒屋に集う人みんなに好かれた。そうして、ジュンちゃんは私たちとすこし親しい仲となった。
 
それから居酒屋は3年ほどで店じまいをした。叔母は結婚し、私の両親も籍を入れて小さな結婚式をあげた。ジュンちゃんはゴミ収集の仕事をはじめた。
店じまいをしたあとも、ジュンちゃんはたまに私たちに会いに来た。あいさつと少しの近況報告をして、いつもすぐに帰った。いっしょに食事をしたりすることはなかった。結局さいごまでジュンちゃんと私たちはそれ以上の仲にはならなかった。
 
ジュンちゃんはそのあとすぐに自殺したらしい。ジュンちゃんのお葬式ではみんなが悲しんだ。どうして、と言う人もいたし、やっぱり、と言う人もいた。ジュンちゃんは、そうして私たちの前からいなくなった。15年前のはなし。

ウゥッ

まいにち忙しい。デートをしたり、よるにご飯を食べに行ったり。夜はあまりアパートでご飯を食べられない。これは、でも仕方がない。お金がない。ないのに古着に7000円使ったりわざわざ無印良品の石鹸を買ったりする。頭が悪い。
ちなみに、ほんとうに大学内では頭が悪い。
彼氏のことがだいすき。大好きすぎてどうしようもない。わたしのへやでゲボを吐いても、帰りたくないとだだをこねても、目玉焼きを作ろうとして油をこぼしても、彼のことすべてがだいすき。とにかくやさしくておだやかで、けれどだらしがない彼がだいすき。だらしがないひとはまじで嫌なんだけど、彼のだらしなさはどうしても許してしまう。朝は起きないし、聞くところによると、高校はほとんど行ってなくて留年しかけたらしい。あともうすこし「礼拝」の授業を休んでいたら、留年していたんだって。彼は愛されキャラなので友達も多かったらしいけれど、彼曰く、学校はつまらないから行きたくなかったらしい。友達いるならいけばいいのに〜。


とにかく私は私の部屋で彼と過ごす時間がだいすきだし、彼とどこかにお散歩する時間も好き。あと、学校の中でたまーーーに食堂などで会った時に「あ…」と言って手を振る瞬間も好き。きょうはパーティでお酒をのみながらふざけていろんな男女と乱痴気騒ぎしてしまったけれど、そんなときに彼から「気をつけて帰ってね」とラインが来ると、とたんに切なくなって愛おしくなって頭がキリッと冴える。しっかりしなくちゃとおもう。